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Space BD様

宇宙への挑戦をあきらめないために。 損保ジャパンと二人三脚で新しい補償の形を確立 損保ジャパンと二人三脚で新しい補償の形を確立 損保ジャパンと二人三脚で新しい補償の形を確立

INTRODUCTION

2022年8月、Space BD株式会社(以降、Space BD)は宇宙産業の発展を目的とした包括協力協定を損害保険ジャパン株式会社(以降、損保ジャパン)と締結。現在は両社でタッグを組み、ロケットや衛星の打ち上げ失敗時に宇宙保険を活用して再打ち上げの機会を提供する“リフライト保証制度”を展開している。
今回のインタビューでは、リフライト保証制度を発案・事業展開したSpace BDの李氏と、損保ジャパン 航空宇宙保険部宇宙産業開発課の川田氏の対談を実施。リフライト保証制度が開発された背景、宇宙業界が抱えている課題、今後の展望について語っていただいた。

INTERVIEWEE
  • 李 美亜 氏

    Space BD 株式会社

    ローンチサービス事業 事業ユニット長

    李 美亜

    2016年ワシントン大学航空宇宙工学部卒業。在籍中、折り紙をモデルとした構造体の設計、衝撃吸収メカニズムの研究に従事。
    卒業後、National Instruments社にて大手自動車OEM、電機メーカー、研究機関のアカウントマネージャーとして、テストオートメーションを基軸とした開発戦略の提案から運用技術支援等を担当。Space BDでは、海外営業として国外企業との協業機会の拡大や、海外案件を担当。
  • 川田 烈 氏

    損害保険ジャパン株式会社

    航空宇宙保険部 宇宙産業開発課 課長代理

    川田 烈

    2007年経済学部卒業後、旧(株)損害保険ジャパンに入社。大阪にて自動車ディーラー担当、広島にて保険専業代理店や地場企業の営業担当を経て、2018年から航空宇宙産業を担当。
    宇宙スタートアップとの事業開発や宇宙事業者のニューリスクに対する保険開発に従事し、宇宙産業の発展への貢献を目指す。

※所属はインタビュー当時のものです

SECTION01

現在の事業内容について

  • まずはSpace BDの事業内容を教えてください。

    Space BDでは技術力に立脚した事業開発を強みとし、衛星打上げサービスや国際宇宙ステーションを活用したサービスを主軸としながら、宇宙での実証実験や衛星の打ち上げを検討されているお客様のビジネスをサポートする事業を展開しております。損保ジャパンとは、衛星打上げサービスのオプションサービスとしてタッグを組み、ロケットや衛星の打ち上げ失敗時に再打ち上げの機会を提供する宇宙保険“リフライト保証制度”を展開しております。

  • ご相談いただくお客さまのジャンルも幅広そうですね。

    そうですね。例えば製造業界では実証実験目的で打ち上げを希望される方が多いですし、その他にも、ISS※の微小重力環境を活用した実験サービスとしてライフサイエンス企業からの問い合わせや、企業プロモーション活動の一環として宇宙での取り組みに挑戦されるお客さまも増えております。
    ※ISS:国際宇宙ステーション。地上から約400km上空の宇宙空間にある有人実験施設。

  • 宇宙での取り組みというと、衛星での観測だけというイメージが強かったので、ライフサイエンス企業やプロモーション活動の一環として利用されているところもあるというのは驚きです!

    確かに、今まで宇宙は研究用途で使われることがほとんどでした。しかし、最近では宇宙を使った新たな利用価値を創出するために、幅広いジャンルのお客さまからご依頼いいただいております。そのほかにも、例えば宇宙という空間を使ってセキュリティサーバーを構築する計画など、今後は新たな業界での活用も期待されています。

    川田

    損保ジャパンではプロモーションを目的として、Space BDが主催する“スペースデリバリープロジェクト~RETURN to EARTH~”(※)という企画に参加し、損保ジャパンのロゴなどを刻印した金属板の宇宙曝露に向けた打ち上げを依頼いたしました。李さんの仰る通り、宇宙には様々な用途があるのでビジネスパートナーとなる企業は無限大だと思います。
    ※Space BD、損害保険ジャパンへISS「きぼう」曝露部プラットフォームを活用した記念品サービスを提供 | Space BD株式会社のプレスリリース

  • なるほど。飛躍的に事業を展開している中で、現在課題に感じていることはありますか?

    地上での常識と、宇宙における常識のギャップです。近年、宇宙産業に取り組む企業は増えてきているものの、宇宙業界はまだまだ特別な存在。例えば、従来の衛星相乗り打上げサービスでは、ロケットを打ち上げする際はエンジンを点火したところまでが契約なんです。そのあとロケットの打上げが失敗しても、衛星が起動しなくても、サービスはそこで終了。でも、地上だとそうはいかない。例えば運送業だったら、荷物を船や車に乗せるだけではなくて、相手に届けるまでがサービスとなっています。

  • 実際に宇宙業界の経験のないお客さまから契約内容について指摘されることはないのでしょうか?

    あります。最初に申し上げたように、現在宇宙ビジネスを考えている企業のジャンルは様々。その中でよく話題にあがるのが契約内容についてです。例えばある業界のお客さまから『この業界からするとこの内容では契約が成り立たないですよ』と指摘をいただいたこともあります。これから、宇宙利用のすそ野を広く拡大するために、取り組んでいきたい課題だと思っております。

SECTION02

損保との取り組みについて

  • 損保ジャパンとSpace BDでは現在“リフライト保証制度”の事業展開を行っていますが、両社が出会われたきっかけを教えていただけますか?

    川田

    5~6年前、宇宙ビジネスについて調べていた際にSpace BDのホームページに行きつき、問い合わせたのが始まりです。当時私は新たな宇宙ビジネスを任されていたため、まずは宇宙に関わる保険のニーズを探るべくコンサルティングも行っているSpace BDに事業の相談をしたんです。

  • 最初は協業を目的にスタートしたわけではないのですね!

    川田

    そうですね。具体的な案がないところから始まりました(笑)。もともと損保ジャパンはSpace BDに相談する側で、宇宙ビジネスのマーケット調査を依頼していました。その際に宇宙ビジネスに関するリスクなどを教えていただき、議論を重ね、宇宙保険の事業開発に着地したという流れです。

    お互いに議論を重ねていく上で、保険会社と宇宙でのビジネスサポートを行っている当社を掛け合わせれば、先述した常識のギャップを埋められるのでは?と考えたんです。

    川田

    Space BDにマーケットを調査してもらったことでグローバルにニーズがあることが判明しましたし、両社の強みが掛け合わさることでこれから宇宙ビジネスに参入していきたいと考えている企業の背中を押せる存在になれたらと考えております。

  • 新たに保証制度を展開する上で、苦労されたことや工夫されたことはありますか?

    川田

    Space BDと始めた保証制度は、本当にオーダーメイドの取り組み。そもそも宇宙ビジネスにチャレンジする企業の母数が少ないため、成功確率や失敗確立を表す十分なデータがない状態からのスタートでした。そのため、Space BDに調査してもらった内容を参考にしたり、海外の保険マーケットとの関係性を構築して情報を入手したり、顧客のニーズを掴むところから始めました。あとは、お互いの業界を知る努力をしましたね。知見のない業界だったので。

    最初のころは一緒に契約書を読み合せましたよね、一つひとつ契約内容を確認し合って(笑)

    川田

    はい、いい思い出です(笑)。ロケットの打ち上げに関する契約書を参考にしていましたね。私は宇宙業界の常識や専門的なことを李さんに教えていただいて、我々は保険業界についてお教えして。お互いに宇宙業界と保険業界について学ぶため、最初は契約書を読み合せて各々の問題点を洗い出しました。やはり、保険サービスを展開するなら大元の契約内容を知っていないと保険の規約を作れないので。

SECTION03

今後の取り組み

  • リフライト保証制度”を展開するようになってから変化したことはありますか?

    同制度を展開するようになってから『そういうサービスがあるならロケットや衛星の打ち上げを検討したい』とポジティブに検討してくださるお客さまが増えました。近年では宇宙ビジネスに対する政府の支援も金額的に増えていますし、これから新しく宇宙での取り組みに挑戦したいというお客さまも多いです。しかし、そんな状況だからこそ、もっと保証制度の内容をブラッシュアップさせていかなければならないと思います。

  • 既存のお客さまだけでなく、新規で宇宙ビジネスへの取り組みを検討しているお客さまも増えていると。

    はい。そういった方々に『現時点ではこの条件でないと対応できないんです』とこれまでの常識を押し付けるのではなく、ニーズに沿った対応ができればと考えております。

  • 先ほど仰っていた、宇宙業界における常識のアップデートですね。

    ええ。やはり、他の人たちにとっての当たり前に近づかないと、宇宙ビジネスが当たり前の存在にならないと考えているので。そして、そのギャップを埋められるのが保険という存在だと思っております。そういった意味では、Space BDと損保ジャパンは親和性が高いと感じていますね。

  • Space BDが感じている課題に対して、損保ジャパンは今後具体的にどのような取り組みを進めるべきだと考えていらっしゃいますか?

    川田

    損保ジャパンとしては、お客さまが宇宙ビジネスに取り組みやすいようスタイルを確立することが重要と考えております。宇宙ビジネスにはロケットが打ち上げに失敗するだけでなく、衛星や宇宙に打ち上げる予定の製品の開発がお客さま都合で間に合わないなど様々なリスクが考えられます。しかし、最初からすべてのリスクをカバーするのは現実的とはいえません。まずは打ち上げ失敗時のアフターケアを行うなど補償内容をコンパクトにして、お客さまに利用されやすい形を模索する必要性があると考えております。

  • なるほど。現段階では敢えてわかりやすくシンプルな補償内容に設定していると。

    川田

    そうして実績を積んだ後、ゆくゆくは様々なリスクに対応できるよう補償内容をグレードアップしていきたいと考えております。

    そうですね。まずは実績を積んでいき、定量的なサービスにできたらと思います。いまは宇宙にある可能性を感じつつも、宇宙業界の”当たり前”に縛られて諦めざるを得ない状況の企業がいらっしゃると思うので。

    川田

    はい。そのためにも今後は海外の宇宙市場を含むグローバルな視点で常にアンテナを張りつつ、サービスの質を上げていきたいです。よりクリアに、なおかつ宇宙ビジネスへの挑戦の芽が育つような取り組みになるよう今後もタッグを組んでいきたいですね。お客さまが宇宙ビジネスに安心してチャレンジできるようなサポート体制を構築していきたいです。

「宇宙ビジネスに挑戦する企業の背中を押せる存在になりたい」と語る両氏。
既存の概念や業界の常識に捕らわれない柔軟なアクションは、今後宇宙ビジネスを我々にとってより身近な存在へと導くことだろう。
手探りの状態からスタートしたリフライト保証制度はこれから更に磨きがかかり、より利用しやすく様々なニーズに対応できるようになるはずだ。

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