2025年5月、株式会社日本旅行(以降、日本旅行)は創業120年の記念事業として、月に想いを届けるプロジェクト『We are going to the Moon!』を企画。本プロジェクトにおいて、損害保険ジャパン株式会社(以降、損保ジャパン)はパートナーとして参画している。
今回は、そんなパートナー関係にある日本旅行 宇宙事業推進部の中島氏と、損保ジャパン 宇宙産業開発課の阿保氏で対談を実施。創業120周年記念事業として開催されるプロジェクトの趣旨とは?そして、両者がタッグを組むことになった経緯や進行中に感じた課題点、今後の展望について語っていただいた。

株式会社日本旅行
事業共創推進本部 宇宙事業推進部 マネージャー
中島 修 氏

損害保険ジャパン株式会社
航空宇宙旅行産業部 宇宙産業開発課
阿保 和香奈 氏
※所属はインタビュー当時のものです
日本旅行の宇宙事業推進部は、宇宙関連事業に取り組む専門部署です。日本旅行の創業110周年記念企画でロケットの打ち上げ応援ツアーを開催した際、お客様から反響が大きかったことを受け、2020年より宇宙事業推進チームが正式に発足。その後、2026年からは組織改革により、宇宙事業推進部となりました。
中島 当事業部では、宇宙に関する様々な事業に取り組んでいます。その中でも主軸となっているのは、“打ち上げ支援事業”、“教育事業”、“地域づくり事業”の3つです。ロケットや人工衛星の打ち上げ事業者の支援、宇宙をテーマにした体験型プログラムの開催、宇宙施設がある地域を観光地として活性化させるプロジェクトなどに取り組んでおります。
そうですね。宇宙事業推進チームを発足した当初は、どちらかというと実利に近い事業からスタートしました。いまでこそ、宇宙事業推進部では“人を宇宙に送る”というミッションを掲げていますが、このミッションを公にしたのは2025年ころからなんです。以前より宇宙旅行事業は水面下で検討されていましたが、敢えて公言することはありませんでした。社外はもちろん、社内に向けても宇宙旅行事業に取り組むという意向は発表していませんでしたね。
発足当初はまだ技術的にも宇宙産業の成長的にも、宇宙旅行自体が夢物語のような存在だったんです。足元が整っていない状態で計画を発表しても、遠すぎて夢物語だと感じさせてしまうと考え、あえて社内の人間にも宇宙旅行事業計画は伏せていました。逆に、『弊社は宇宙旅行事業に取り組みません。足元を整えて、宇宙に紐づけたビジネスをしていきましょう』と社内向けに発信していたくらいでした。
はい。しかし、次第に技術も向上し、宇宙産業も発展していき、近年では宇宙旅行が夢物語ではなくなってきました。まさに、これまで我々が密かに思い描いていた宇宙旅行が可能な世界を作れそうな状況になってきたため、ちょうど2025年に日本旅行が創業120周年を迎えるタイミングで、宇宙旅行事業への参入を正式に発表しました。
仰る通りです。もちろん、まだまだ宇宙産業は発展中のため、現段階でも宇宙旅行は到底簡単なこととは言えません。しかし、突拍子もなく宇宙旅行事業に取り組むと発表したわけではなく、何年も前から着々と計画は進んでいました。




もともと日本旅行とは、旅行会社向けの保険に関してお取引させていただいておりましたが、宇宙事業に関する接点はありませんでした。しかし、2023年頃に損保ジャパンが宇宙産業開発課という宇宙の専門部署を立ち上げるタイミングで、日本旅行にコンタクトを取らせていただいたんです。
いいえ。宇宙産業開発に取り組むにあたり、「将来的には宇宙産業の1つとして、宇宙旅行も考えられるよね」という意見が出たのをキッカケに、かねてよりお取引していた日本旅行に宇宙推進事業チームがあるということでご相談させていただきました。しかし、当初は協業というより、宇宙事業専門の部署のある日本旅行から教えていただくという形でした。
(笑)。教えるというより、意見交換ですね。宇宙事業分野でコンタクトをとるようになった2023年以降、定期的に意見交換をするようになりました。
その後、2025年に日本旅行が創業120周年記念を迎えるタイミングで、月へメッセージを届ける『We are going to the moon!』を実施することになったのがキッカケです。『We are going to the moon!』は、公募したメッセージを記載したペイロード(搭載物)を月面ランダー(着陸船)に搭載して月へと届けるプロジェクト。損保ジャパンには、「このプロジェクトに保険を付保できますか?」と相談させていただきました。
将来自分たちが宇宙旅行を手掛ける上では保険の検討は必要になるだろうと考えており、その前段階として今回のプロジェクトにおいてはどのような保険になるのか理解したかったというのが最初にありました。実際、このプロジェクトで損保ジャパンにパートナーとして参画していただいたお陰で、月へ到達することの大変さや、フェーズ毎にリスクが異なることなどを学ぶことができ、今回も保険が必要と判断しました。参画していただく前はその辺をあまり理解出来ていませんでしたが、こういった知識を学べていないと、安全・安心・快適な旅をお客様へ提供できませんので。
そうですね。その他にも、SOMPOリスクマネジメントから月面へ輸送するペイロードの製作や輸送事業者とのやり取りに関するアドバイスを頂くなど、コンサルティング面でもサポートしていただき大変助かりました。
本プロジェクトではアメリカの月面輸送事業を手掛ける企業にペイロードの製作や輸送を依頼したのですが、何しろ初めての試みであり専門知識がないため、契約書の読み方も質問の意図もうまく汲み取れなかったんです。そんなときに、専門知識を有するSOMPOリスクマネジメントのコンサルタントが「この契約内容だとリスクが高いですよ」「この質問にはこういう風に返した方がいいですよ」「先方にこういう質問をしてください」と的確にアドバイスをしてくださいました。
当社とSOMPOリスクマネジメントの兼任で、人工衛星の製造・打上げなどに知見のあるエンジニア出身のコンサルタントが在籍しているため、技術的な内容や月面輸送事業者との受け答えの仕方などに関して諸々アドバイスさせていただきました。損保ジャパンからは保険のご案内をし、今回のようにお客様のニーズに応じてSOMPOリスクマネジメントからオーダーメイドでコンサルティングを行う機会が多いのですが、日本旅行のお力になれていたなら幸いです!
当社の顧問弁護士も宇宙事業は専門外で、契約書や質問の意図を紐解くのに苦労していたため大変助かりました。先方の要望に100%応えるべきか悩んでいるときに「これは先方にお願いしていいと思います」と、人工衛星等を製造する側の視点から具体的なアドバイスをいただけたのはありがたかったです。



創業120周年記念プロジェクト『We are going to the moon!』により月に物を輸送出来る事業者として実績が作れたら、その経験を活かして今後はビジネスの幅を広げていきたいと考えています。宇宙事業の拡大は会社の価値向上にも繋がりますし、将来的に会社としての売上にも繋がっていくと考えておりますので、これからも注力していきたいです。
そうですね。宇宙旅行だけでなく、宇宙輸送もサービスを整えてワンパッケージにして、販売できるようになっていきたいです。ただ、その際にはリスクを想定して保険を付保するなど対策を講じなければならない。正直、損保ジャパンと協業する前は宇宙事業に関するリスクを正しく理解できていなかったため、リスクマネジメントの重要性について学べたのは、損保ジャパンと協業出来たお陰だと考えています。
ありがとうございます。今回のプロジェクトは私たちにとっても新しい挑戦であり、“どんなリスクがあるのか”“どんな補償が必要なのか”という点から手探りで保険内容を考案できたお陰で、私たちにとっても大きな学びになりました。この経験を活かし、今後もお客様が安心感を得られる保険商品に出来るよう、お客様とのコミュニケーションを大切にしつつ、プロジェクトを深く理解してリスクを想定できるよう努めて参ります。
はい。その他にも、当社は旅行会社という所謂“サービス提供者側”ですが、今回保険を掛けてプロジェクトを進めることで、サービスを受ける側の気持ちにもなれたことも良い経験になりました。また、コンサルタントからのアドバイスを受けて、損保ジャパンへ相談出来る領域の広さを知れたのも良い勉強になりました。
そういっていただけると幸いです(笑)。コンサルティングに関しては、今後はより一層お客様の言語化しにくい想いを汲み取れるよう意識しつつ、今あるデータを最大限に活用してリスクを想定できるよう邁進してまいります。



日本旅行の創業120周年記念プロジェクト『We are going to the moon!』での協業を経て、互いに新たな学びを得たという両氏。
宇宙旅行が夢物語ではなくなった現代においても、宇宙事業はまだまだ発展途中であり、新たな取り組みを行う度に戸惑うことはあるだろう。
しかし、手探り状態ながらも1つのプロジェクトを成し遂げた経験は、きっと今後宇宙事業の拡大に大きく貢献するはずだ。